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続・善と悪の経済学資本主義の精神分析

, トーマス・セドラチェク

によって トーマス・セドラチェク
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内容紹介 NHKの好評番組「欲望の資本主義」で話題となった、チェコの経済学者、トーマス・セドラチェク氏の書籍第2弾!前著「善と悪の経済学」は、朝日新聞、日経新聞でも大きく紹介され話題に!今回の著作では、フロイトやユングの心理分析を活用して、経済の精神的病と、その「心の処方箋」を明らかにする。現代の経済システムに、精神病質と診断されるような問題はあるのか?あるとすれば、それはどんなものなのか?経済学は社会の病をどの程度明らかにできるのか?経済学が役に立つ病はあるのか? あるいは逆に害になる病とはなにか?二人の偉大な学者、フロイトとユングはともに、神話を重視していた。多様な彩りのある、矛盾に満ちた神話のなかに、資本主義のあるべき姿を求め、私たちを豊かにしてくれる資本主義の未来を探る。 著者について トーマス・セドラチェクチェコの経済学者1977年生まれ。チェコ共和国の経済学者。同国が運営する最大の商業銀行のひとつであるCSOBで、マクロ経済担当のチーフストラテジストを務める。チェコ共和国国家経済会議の前メンバー。「ドイツ語圏最古の大学」と言われるプラハ・カレル大学在学中の24歳のときに、初代大統領ヴァーツラフ・ハヴェルの経済アドバイザーとなる。2006年には、イェール大学の学生らが発行している『イェール・エコノミック・レビュー』で注目株の経済学者5人のうちのひとりに選ばれた。前作『善と悪の経済学』はチェコでベストセラーとなり、刊行後すぐに15の言語に翻訳された。2012年にはドイツのベスト経済書賞(フランクフルト・ブックフェア)を受賞。オリヴァー・タンツァーオーストリアのジャーナリスト1967年、オーストリアのリンツに生まれる。『Der Standard』紙と『Profil』誌で編集者を務めたのち、オーストリア放送協会の通信員として、EUのブリュッセル本部に長年駐在した。2006年に日刊新聞『Tageszeitung Osterreich』の立ち上げに参加。2008年に週刊新聞『Die Furche』紙に移り、現在は同紙の副編集長で、外交・経済部門のリーダー。著作には本書のほかに、Josef Tausとの共著『Umverteilung neu,Ideen fur die Zukunft von Wirtschaft und Finanzsystem』(2011年)やMarkus Wolschlagerとの共著『Alles wird gut:Wie Wirtschaftskriesen die Welt verbessern』(2009年)がある。森内 薫(モリウチ カオル)翻訳家英語・ドイツ語翻訳家。上智大学外国語学部フランス語学科卒。主な訳書にブラックバーン&エペル『細胞から若返る! テロメア・エフェクト』、バーナム&フェラン『いじわるな遺伝子 SEX、お金、食べ物の誘惑に勝てないわけ』(以上NHK出版)、フォックス『脳科学は人格を変えられるか?』(文藝春秋)、ヴェルメシュ『帰ってきたヒトラー』(河出書房新社)ほか多数。長谷川 早苗(ハセガワ サナエ)翻訳家独日翻訳者。訳書にシルト=ルドルフなど『脊椎の機能障害 徒手検査とモビライゼーション』、ラルセンなど『人体らせん原理とハタヨーガの融合 メディカルヨーガ』、ヘプゲン『筋筋膜トリガーポイント ポケットアトラス』(以上ガイアブックス)、ビットリッヒ『HARIBO占い』(阪急コミュニケーションズ)。
以下は、続・善と悪の経済学資本主義の精神分析に関する最も有用なレビューの一部です。 この本を購入する/読むことを決定する前にこれを検討することができます。
①アダムの最初の妻;リリス本書の原題は「リリスと資本の悪魔フロイトのコーチの上の経済」です。このリリスとは、アダムの最初の妻のことです。これは初耳でした。メソポタミアの神話に由来するそうです。リリスは、人間の家の扉の前で待ち伏せ、生まれたばかりの赤子を殺して血と魂を吸い出し、死者のエネルギーを糧に毎日、百匹の悪魔を生み、生まれるや否や、それらをすべて殺さなければならない(p.18)。この神話が、需要と供給の奇妙な均衡状態の象徴と分析されます(p.42)。ちなみにリリスは、ゴヤの絵で有名な「我が子を食らうサトゥルヌス」とは違うようです。②女神ティアマトと最強の戦いの神マルドゥクもう一つメソポタミアの神話から。大地が生まれる前、すべての神々を女神ティアマトが支配していた。ティアマトは星々と神々を生んだ。生まれた神々は騒ぎを起こすようになり、ティアマトの夫アプスーを殺し、その体内から最強の戦いの神マルドゥクを生み出した。ティアマトはマルドゥクに戦いを挑むが負けてしまう。神々はマルドゥクをティアマトの後釜に据えてよいか、マルドゥクが奇跡を起こせるかをテストします。マルドゥクは言葉で衣を破壊し、言葉で衣をもとに戻した(p.74-5)。この神話は、出産という自然の奇跡より、言葉による奇跡を優位に置いたものと解釈され、自然の円環的経済から直線的な経済発展に移行したことを説明するものとされます。③アキレウス、アポロンのサディズム次は、ホメーロス『イーリアス』に登場するギリシャ神話の英雄アキレウス(アキレス)です。フロイトは、性的ではないサディストの人物像をアキレウスのような破壊的な戦士と結びつけて考えていました(p.95)。無意味で非生産的な競争が経済を支配していること、破壊と暴力にもとづく社会制御メカニズムがアキレウスに体現されています(p.126)。音楽を創り出した神アポロンは、地上最高の笛の名手と噂されるマルシュアスに、竪琴で勝負を挑みます。勝負は引き分けでよかったのに、アポロンは難題を突き付けて勝利をもぎ取ります。そして、残酷な報復を堪能するのです。生きたままの体からゆっくりと皮をはがし、最後には木に釘づけにするのです(p.129)。システムがアポロンのように病的なナルシシズムに支配されると、絶えず称賛を求め、それが競争状態でサディズムの衝動を生むのです(p.130、オットー・カーンバーグの説)。これにフロイトの死の欲動(タナトス)が加わり、ナルシシズム、サディズム、マゾヒズムが一体となります。この辺の議論は難しい。確実なことは、人は死ぬという事実だけです。愛は不確かなため、サディストは自分が支配できるものしか愛せなくなるのです。また、他の権威に対しては従順なため、サディズムとマゾヒズムが結びつくのです。サディストは整然とした官僚システムの信奉者となるのです(p.138)。こうして人は、意味のない市場の競争の中で朽ち果てていくのです(p.154)。④本書の結論の拡張神話や精神分析と経済活動を対比する目的は何なのでしょう。本書のまえがきには、「経済の精神疾患的な側面を明らかにすること」とあり、最後の章には、「心理学的手法で論証された経済学」の確立とあります(p.368)。この心理学とは、現在の疑似自然科学を志向した心理学ではなく、精神分析のことでしょう。最後の章で、資本主義システムが躁うつ病的傾向と診断されますが、症状は適応努力の結果とする説、つまり防衛機制という精神分析理論からすると、躁うつ的な適応を人類がしているということではないでしょうか。経済システムへの懐疑と不信の表明が本書の主たるテーマですが、この問題を解く鍵は希望と夢、ある状態への憧れであると提案されます(p.369)。ある状態とは、「成長と競争をもう少し抑えたときの経済」ということでしょう(p.366)。最後の文は、「必要なのはほんの少しの勇気だけだ」となっているように、想像する世界に躊躇せずに向かう果敢さを求めています。これは懐疑と憧憬、躊躇と果敢の躁うつ的適応の提案のように思えます。デルフォイの神託「汝自身を知れ」も最後の結論部分に入っています。この神託に、本能と我欲と自意識の中に閉じ込められたアイデンティティでしか答えられないのが、現代人であると本書は述べます。そのアイデンティティに代わる、普遍的人間性の認識に立った、自己の希望、未来に関する記憶の物語(モンテ・クリスタッロの羊飼い)で本書は終わります。「未来に関する記憶」という表現は、修辞学(レトリック)の撞着語法になるでしょうが、実に素晴らしい。この記憶とは本書で取り上げられた神話のことです。

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