冬の本
本, 天野祐吉
によって 天野祐吉
3.8 5つ星のうち 3 人の読者
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内容紹介冬に読んだ本や、冬になったら思い出す本。 冬に出会った本や、まるで冬のような本。 作家や音楽家や愛書家。本を愛する84人が、約千字で「冬」と「1冊の本」についてのエッセイを書き下ろしました。 装丁は和田誠さん。 冬と本の魅力がつまった、プレゼントに最適の1冊です。 今年から冬は読書。84とおりの冬の読書。内容(「BOOK」データベースより)冬に読んだ本。冬になると思い出す本。まるで冬のような本。「冬」と「1冊の本」をめぐる、新しいエッセイ集。商品の説明をすべて表示する
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以下は、冬の本に関する最も有用なレビューの一部です。 この本を購入する/読むことを決定する前にこれを検討することができます。
今日から「衣更え」ですが、そんなことばも季節に合わなくなってきた「異常気象」の夏がこれから始まると思います。そんな時に「冬の本」を読みました。ページを開くと、見開き2Pの中に一遍づつ、作家から編集者、歌手、科学者、あらゆる人たちが「冬」と「本」、2つがそこにあるということを唯一のルールとして自由に書かれたエッセイ集です。ある人は、冬の陽射しの朝食のあとの午前、夫婦で小説を読んだり新聞を読んだりしている、ということを綴っているエッセイ。昔の恋愛遍歴を思い出しているが、最後の恋人がやがて目の前の老眼鏡をかけた彼女に向かうという短編のような一遍を書く。(「本を閉じると」上原隆)作家・門田光代は小学生の時に宮沢賢治が好きで、なぜか彼の描く「光景」は冬のようだったという。もちろん「風の又三郎」には夏の水遊びがあるし、「どんぐりと山猫」は秋、「土神と狐」は夏のはじめ。それでも、というのだ。なんとなくわかった。私が花巻を旅したのが冬だったからかもしれない。写真家の鈴木理策は、中谷宇吉郎「雪」を持って来た。和歌山県新宮に生まれた鈴木は、雪は馴染みのない遠い存在だったという。だからこそ、中谷の「情熱」に魅かれた、という。今「雪」を読んでいる途中なので、とてもよくわかる。写真家鈴木の写しているという、誰の足跡もない早朝の山奥の雪景色を見てみたいという気もするが、文章の中で想像する方がいいのだろう。倉敷の古本屋「蟲文庫」の店主、田中美穂さんのチョイスはなかなかだった。彼女の古本屋顛末記を読んだ直後なので、その気持ちに共感した。店開店一年後の冬の日、初めて万引きにやられた時に、自分を慰めて思い出したのが魯迅の「孔乙己」の一節「竊書(せっしょ)は盗みとは申せん…竊書はな…読書人の常じゃ。盗みと申せるか」だという。転売目的の万引きも増えている中、そんな悠長なことも言えなくなっているそうですが。詩人の文月悠光さんは歌集を紹介した。その代表作。「シチュー鍋に背中を向けた瞬間に白い巻き毛の天使がこぼれる」30歳で急逝したというその歌集を読んでみたいと思ったが、県立図書館には置いてなかった。「歌集 シチュー鍋の天使」北川草子著沖積舎(2001)天野祐吉さんが谷内六郎さんの遺した一冊の闘病絵日記に惚れ込んで、自ら立ち上げた出版社で限定復刻版を作ったらしい。それも図書館でリクエストしたが、どうやらむつかしそうだ。なにしろ、1000冊も刷ってはないのだ。わざわざ他の図書館から借り受けて、読むのも気が引ける。その間に万が一疵がついたら大変なことになる。この文章を書いて直ぐに天野祐吉さんも亡くなっている。「楽書 病院日記」谷内六郎著 天野祐吉作業室(2011)この本の巻末には、登場した84人の簡単なプロフィールと紹介した本の紹介が載っている。「古本屋なら入手可能」とか書いていて、わりと親切。私が欲しいと思った本のほとんどは入手困難だった。冬の本だからだろうか。思ったよりも、楽しく明るい本をあえてチョイスする人はほとんどいなかった。私が興味を持つ本はなかったり、既に読んでいたりだったが、拘りのある人は多くて楽しかった。初夏に向かう今だから、こういう本もいい。今年の冬に「夏の本」は出ないかな。でたならば、小さな出版社のこういう企画が成功したということを示していて、少し楽しくなるのだけど。2015年6月1日読了
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